協会の歴史を物語る資料と調度。創立から続く執事文化の系譜
Our History — Since 1890

受け継がれる、135年の系譜

1890年(明治23年)の創立以来、協会は日本における執事文化の発展に歩みを重ねてきました。西洋の伝統と日本のおもてなしの精神を融合させ、三代の頭取のもとで受け継がれてきた、135年の物語をご紹介します。

I. Prologue

一世紀を超えて、受け継がれてきたもの

日本に執事という職が根づいて、135年。協会の歴史は、明治の文明開化にはじまり、戦後の全国展開、そして分立と再統合を経て、いまへと続いています。ひとつの理想が、時代ごとに形を変えながら受け継がれてきた道のりです。

変わったものと、変わらなかったもの——研修の手法も、暮らしの形も、時代とともに移り変わってきました。それでも、西洋式の規律と品格を日本の礼節と結び合わせるという創立の志は、三代の頭取のもとで一度も途切れることなく守られてきました。

このページでは、創成期から現在までの歩みを、明治・昭和・平成・令和という時代の章立てでたどります。年ごとの出来事とともに、そのとき協会が何を大切にしたのかを、あわせてお伝えします。

創立
1890年
歴史
135年
継承
3代
再統合
2000年
II. Chronicle

時代とともに歩んだ、四つの章

協会の135年を、明治の創成期、昭和の発展期、平成の統合と革新、そして令和の継承——四つの時代の章に分けてたどります。各章では、その時代に協会が何を大切にしたのかを叙述し、続く年表で節目の出来事をひとつずつ振り返ります。

明
The Founding

創成期

1890 – 1923

協会の歴史は、明治維新後の文明開化のただなかに始まります。急速に西洋の文化が流れ込むこの時代、創立者・田中慎吾は英国留学で学んだ執事の作法と精神を日本に持ち帰り、正統な執事サービスを根づかせることを志しました。

西洋式の規律と品格を、日本古来の細やかな礼節と結び合わせる——その融合こそが、協会が最初に掲げた理想でした。単なる作法の輸入ではなく、日本の暮らしに寄り添う独自の執事像を築くことに、創成期の歩みは費やされます。

執事サロンの正餐の間で椅子の後ろに控える執事
1890

協会の創立

田中慎吾により、日本における執事の専門機関が創立される。西洋式のサービスと日本の礼節を兼ね備えた執事を育てる、という理念がここに掲げられました。

1903

養成プログラムの開講

初の体系的な執事養成プログラムを開講。座学と実技を組み合わせ、西洋式のサービスマナーと日本の礼儀作法を融合させた独自のカリキュラムを確立しました。

1923

行動規範の確立

協会独自の行動規範と品質基準を明文化。会員が守るべき礼節・守秘・立ち居振る舞いの原則を体系化し、後の教育・認定制度の礎を築きました。

昭
Growth & Reach

発展期

1935 – 1985

創成期に築いた土台の上に、協会は教育の質そのものを深めていきます。西洋式のサービス作法と日本の礼節を統合した研修体系を段階的に整え、執事養成の水準を一段と高めました。

やがて活動は東京の枠を越え、各地域へと広がります。地域の特性に応じたサービスを提供しながら、全国的な人材育成の網を織り上げていく——発展期は、協会が「点」から「面」へと成長した時代でした。

協会が全国へ広がるにつれ、東と西では執事の作法や教育の考え方に隔たりが生まれていきました。どちらが正しいという話ではなく、それぞれの地域のお客様に合わせて磨かれた結果です。しかしその違いはやがて会の方針をめぐって意見が大きく分かれる事態となり、1955年、協会は関東執事協会と関西執事協会へ分かれる道を選びます。

分かれたのちも、二つの協会はそれぞれの流儀で執事を育て続けました。研修手法の刷新も、品質基準の整備も、双方が並行して進めたものです。同じ「執事」を名乗りながら異なる基準が育っていく——その歩みが、のちの統合の課題となっていきます。

日本人の講師と受講者がトレーの受け渡しを確認する執事研修の情景
1935

研修体系の再編

西洋式のサービス作法と日本の礼節を統合した研修体系を全面的に再編。座学と実技を組み合わせた段階的なカリキュラムを確立し、養成の質を高めました。

1955

協会の分立

方針をめぐる意見の隔たりから、協会は関東執事協会と関西執事協会に分かれることとなりました。以後四十余年、二つの協会はそれぞれの流儀で執事を育て、地域に根ざした独自の基準を築いていきます。

1970

サービスの現代化

関東・関西の両協会がそれぞれに新たな研修手法を導入し、執事サービスの現代化を推進。伝統を守りながらも、時代のニーズに応えられる人材育成の仕組みを整えました。

1985

全国規模での拡充

両協会がそれぞれの地域で全国規模でのサービス拡充を実施。各々に統一された品質基準を定め、のちの資格認定制度の原型となる仕組みを導入しました。

平
Reunion & Renewal

統合と革新

2000 – 2020

二つに分かれた四十余年は、それぞれが独自の教育と品質基準を育てた時代でした。同時に、同じ「執事」を名乗りながら基準が異なるという矛盾を抱え続けた時代でもあります。

2000年、二代目頭取・山田和彦がその溝を埋めました。双方の作法を突き合わせ、残すものと改めるものを一つずつ決めていく——長い時間をかけた対話の末に、協会は再び一つになります。全国統一の品質基準と教育システムはこのときの合意から生まれました。

突き合わせに長い時間を要したのは、四十余年のあいだに双方が確かなものを積み上げてきたからにほかなりません。関東は迎賓の作法を——お客様をお迎えする所作、席次と間合いの読み、主人の顔を立てる控えめな進み方を、行事の場で磨き上げてきました。関西は商家の暮らしに根ざした細やかな心配りを——日々のご用向きを先回りして整え、金銭や人の出入りに一分の隙も作らない実務の作法を、家の内側で育ててきました。

どちらも捨てるには惜しく、どちらも譲れない。だからこそ、どの所作を残しどの手順を改めるかを一つずつ確かめる作業が必要だったのです。

統合は、単に組織を束ねる以上の意味を持ちました。品質基準と教育システムを全国で一つに揃えることで、どの地域でも変わらぬ執事の水準を保証する。現在の協会体制の基盤は、この時代に形づくられたものです。

基盤が定まると、協会はサービスの奥行きを広げていきます。専門性の高いサービスの整備、教育プログラムの刷新、各地への展開——伝統を守りながら、静かに革新を重ねた二十年でした。

日本人執事チームがサービス品質基準を共有する協働研修の場面
2000

協会の再統合

分立していた関東・関西の執事協会が再統合。二代目頭取・山田和彦の主導により、全国統一の品質基準と教育システムを確立し、現在の協会体制の基盤が整いました。

2005

専門サービスの拡充

プライベートな催しや法人のご要望に応える、より専門性の高いサービスを整備。多様な場面に対応できる執事の育成を進めました。

2008

教育プログラムの刷新

執事養成プログラムに新たなカリキュラムを導入。サービスの質をいっそう高め、資格制度の充実へとつなげました。

2016

各地への展開

主要都市でのサービス拡充とともに、各地への本格的な展開を開始。地域の特性を活かした執事文化の普及を進めました。

2020

非接触・オンライン対応の整備

非接触型のサービスやオンラインでの支援体制を整備。培った作法を守りながら、新しい暮らしの形に柔軟に応える仕組みを築きました。

令
A New Chapter — An Age in Which Butlers Are Chosen

新章 — 執事は選ぶ時代へ

2023 – 現在

三代目の就任は、協会にとって静かな転換点となりました。二代の頭取が守ってきたのは、執事は世に出ることなく黒子に徹し、確かなご紹介によってのみお客様とお会いするという流儀です。その矜持は長く協会の背骨でしたが、同時に、執事を必要とする方がご自身では出会えないという時代でもありました。

三代目・執事ベルが掲げたのは「執事は選ぶ時代へ」という一語です。在籍する執事の名簿を公開し、料金を明らかにし、ご紹介がなくともご依頼いただける窓口を設ける。長く閉じられていた扉を、内側から開ける決断でした。そして2025年2月、一般社団法人として体制を整えます。

この決断をめぐって、会の中で意見が分かれたことも事実です。長く協会を支えてきた者たちは、これまでの流儀にこそ執事の本分があると考え、時代の変化を読む者たちは三代目の方針に賛同しました。議論は尽くされ、道を分かった者もおります。それでも三代目は、執事という仕事を次の百年へ渡すために、この道を選びました。

守ろうとしたものは、どちらの側も同じでした。去った者たちが守ろうとした誇りもまた、協会が受け継いできたものです。その敬意を胸に、私たちは新しい執事協会の第一歩を踏み出しています。

現代の室内で日本人執事が来客へお茶を提供し、伝統を現代の暮らしに活かす場面
2023

三代目頭取の就任

2023年3月、石井裕一(執事ベル)が三代目頭取に就任。「執事は選ぶ時代へ」を掲げ、協会の在り方を内側から見直す取り組みが始まりました。

2023

執事名簿の公開

在籍する執事の経歴と得意分野を公開し、お客様がご自身で執事をお選びいただける仕組みを整えました。

2024

料金と窓口の公開

料金体系を明示し、ご紹介によらないご依頼の窓口を開設。これまで限られた方だけに開かれていた入口を広げました。

2025

一般社団法人設立

2025年2月19日、一般社団法人全日本執事協会を設立。石井裕一が代表理事に就任し、教育・認定・派遣の体制を法人として整えました。

2025

創立135周年

協会は創立135周年を迎え、記念の取り組みを展開。これまでの歩みを振り返りながら、新たな未来への展望を描いています。

III. Lineage

三代にわたる、頭取の継承

日本人講師と受講者がトレーサービスの技を確認する様子。世代を超えて継承される技と心のイメージ

協会の135年は、三人の頭取によって受け継がれてきました。創立者・田中慎吾が掲げた理想を、二代目・山田和彦が全国統一の体制へと結実させ、三代目・石井裕一が新しい時代へと橋渡しする。世代は替わっても、執事の精神は一度も途切れることなく手渡されてきました。

初代

田中 慎吾

1890年 創立者

明治維新後の文明開化のなか、英国留学で学んだ執事文化を日本に導入し、協会を創立。西洋の伝統と日本の心を融合させた執事文化の礎を築いた、協会のはじまりの人。

二代目

山田 和彦

2000年 – 2022年

二代目頭取として、分立していた関東・関西の執事協会の再統合を主導。全国統一の品質基準と教育システムを確立し、現在の協会体制の基盤を築き上げた。

三代目

石井 裕一

2023年 – 現在

三代目頭取として新時代の協会運営を担う。「執事は選ぶ時代へ」を掲げ、執事名簿と料金の公開、ご紹介によらない窓口の開設に踏み切った。2025年2月には一般社団法人全日本執事協会を設立し、代表理事として教育・認定・派遣の体制を法人として整えている。

IV. The Path Ahead

これからの執事協会

135年の歴史を礎に、協会はこれからも日本の執事文化の発展に努めてまいります。次代を担う人材の育成と、暮らしの変化に寄り添うサービスの追求を通じて、受け継いだものを次の百年へと橋渡ししていきます。執事の資格制度やサービスにご関心をお持ちの方は、あわせてご覧ください。

FAQ

よくあるご質問

全日本執事協会は1890年(明治23年)に田中慎吾によって創立され、西洋式の規律と日本の礼節を結び合わせた執事文化を築いてきました。1955年に関東執事協会と関西執事協会へ分立し、2000年に二代目頭取・山田和彦が再統合を果たして全国統一の品質基準と教育システムを確立。2023年に石井裕一(執事ベル)が三代目頭取に就任し、2025年2月19日に一般社団法人全日本執事協会を設立しました。